事業名:ゲノム医療実現バイオバンク利活用プログラム
プログラム名:ゲノム医療実現推進プラットフォーム・ゲノム研究プラットフォーム利活用システム
課題名:ゲノム医療実現推進のためのバイオバンク利活用促進に向けたバイオバンク・ネットワーク構築と運用支援に関する研究開発(2018年度~2022年度)
2018~2022年度の5年間に渡り、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)によるゲノム医療実現バイオバンク利活用プログラム(ゲノム研究プラットフォーム利活用システム )(2018年度採択)について、ToMMoの多数の研究者が中心的に取り組んできました。
同プログラムの中で、2018年度に領域A課題1として、「ゲノム医療実現推進のためのバイオバンク利活用促進に向けたバイオバンク・ネットワーク構築」(研究開発代表者 荻島 創一 東北大学東北メディカル・メガバンク機構 教授)が5年間の課題として採択され、その後、2021年度から関連する課題が同課題に合流する形で参画機関を拡充し、わが国の14のバイオバンクを束ねるバイオバンク・ネットワークを構築して連携を行い、バイオバンクの利活用を促進することを目指してきました
。2021年度からは、同じく2018年度に同プログラムに3年間の課題として採択されていた領域A課題2「倫理的・法的・社会的側面からみたバイオバンク資源利活用促進戦略」(研究開発代表者 吉田 雅幸 東京科学大学生命倫理研究センター 教授、分担研究者の一人:長神 風二 東北大学東北メディカル・メガバンク機構 教授)および、領域Bの3つの診療機関併設型バイオバンク(京都大学、東京医科歯科大学、筑波大学)の課題が合流しました。
複数のバイオバンクが保管する試料・情報を統合的に検索することが可能なシステム「バイオバンク横断検索システム」を開発・構築し、2019年10月に公開しました。公開以来、試料品質管理情報・同意情報の項目を追加した第2版(2020年11月)、疾患特異的臨床情報を追加した第3版(2021年9月)、前向き採取による試料を識別するための項目を追加した第4版(2023年3月)の公開など、累次のアップデートを重ねながら運用を行い、多くの方々に利用しやすいシステムとして受け入れられ、2023年3月までに約980人のユーザー登録を得ることができました。
同システム開発の過程で、多様な背景と設立過程があるバイオバンクが連携・協力して、それぞれが保管する試料・情報を一元的に扱うために、いわゆる「標準化作業」が極めて重要となりました。このプロセスを5年間続け、14のバイオバンクからなるバイオバンク・ネットワークの保有する試料・情報を横断して一括検索できるシステムを構築することができました。初版の公開から現在に至るまで、研究目的に合致する試料・情報が、どこのバイオバンクに、どれだけ保管されているかについて簡単に無料で調べることができる利便性と有用性の高いウェブ上の検索システムとして、構築・運用が続けられています。
バイオバンク横断検索システムの開発にあたっては、日本製薬工業協会や日本臨床検査薬協会などの協力を得て、利用者サイドのご意見を聴取する努力を続けてきました。システムの試作段階での試行的利用機会を設定したり、公開後のアンケートなどを通じてニーズを抽出し、開発にあたってきた結果、このシステムを利用した研究課題を公募し、アカデミアや企業計13件の課題で利用いただきました。また、それぞれのバイオバンクの実際の試料・情報の利活用においても問合せ等が増えてきており、バイオバンクの利用者にとっての利便性が向上しています。
バイオバンクの運営者・利用者が一堂に会してバイオバンクの課題を話し合う場としてAMEDが実施してきたバイオバンク連絡会は2019年までに9回の開催を重ねてきました。その成果を受けて、リニューアルを行い、関係者による課題解決を意識してバイオバンク・オープンフォーラムの開催を始めました。コロナ禍の中、ウェブでの開催ながら、毎回概ね400名程度の参加者を得て、4回の開催を重ねてきました。
2018年度~2020年度の領域A課題2「倫理的・法的・社会的側面からみたバイオバンク資源利活用促進戦略」(研究開発代表者 吉田 雅幸 東京医科歯科大学生命倫理研究センター 教授)の成果を引き継ぎ、バイオバンク利活用ハンドブック第3版を引き続き公開・運用すると共に、倫理支援作業部会を設けて、各バイオバンクの利活用にかかる倫理課題への個別具体的な支援や、「バイオバンク・ネットワークの試料・情報を利用する研究課題の公募」における倫理支援活動などを行っています。特に、同公募課題での倫理審査は中央一括審査の仕組みを活用することで、バイオバンク・ネットワークの中央倫理審査委員会として機能するように検討を進めています。上述のような活動を通じて、参画する14のバイオバンク(2023年3月現在)間の連携をより密接なものにし、名実ともに日本を代表するバイオバンク・ネットワークとして機能しています。同ネットワークでは、相互を訪問するサイトビジットなど多様な活動を通じて相互理解を促進することでノウハウなどの部分でも標準化・共通化を進めています。なお、2023年4月から後継プロジェクトの「ゲノム医療実現推進のためのバイオバンク・ネットワーク構築とバイオバンク利活用促進に関する研究開発」として、引き続き日本全国のバイオバンクのネットワーク構築に努めています。